アップセルとクロスセルの違い|縦と横で考えると設計のコツ
アップセルは縦方向、クロスセルは横方向の提案です。同じ顧客に追加で買ってもらう施策ですが、提案する方向が違います。
マクドナルドで考えると分かりやすくなります。ハンバーガーを買った人に「セットにしませんか」と提案するのがアップセル。同じ食事を、より充実した形に引き上げています。一方、「ポテトはいかがですか」と別の商品を提案するのがクロスセル。並びに商品を足しています。
定義として整理すると、こうなります。
アップセル(縦) すでに購入した商品の、上位版やグレードアップ版を提案する。同じ課題を、より深く、あるいはより確実に解決します。
クロスセル(横) 購入した商品と組み合わせて使う、別の商品を提案する。元の商品とは別の課題を解決します。
「より高価な商品」とは限らない
一般的にアップセルは「より高価な商品を提案すること」と説明されます。ただしこれは、購入前に選択肢を上書きする場合の話です。5万円の商品を検討している人に、8万円の商品を勧める。この場合、顧客が払うのは8万円だけになります。
すでに購入した顧客に対しては、構造が変わります。5万円の商品を買った人に、2万円でアップグレードを提案する。顧客が払う総額は7万円で、注文単価は上がっています。追加で提示する金額は、元の商品より安い。
単体の価格が高いかどうかではなく、注文全体の単価が上がるかどうか。購入後の提案では、この視点の方が実用的です。
どちらを先に用意すべきか
商品が1つしかない段階であれば、アップセルから作る方が現実的です。
縦方向の提案は、顧客がすでに示した関心の延長線上にあります。入門講座を買った人は、その分野をもっと知りたいと考えている可能性が高い。購入という行動そのものが、関心の証明になっています。
横方向は、別の課題を扱います。つまり顧客がその課題を持っているかどうかを、こちらが判断しなければなりません。写真編集を学びに来た人が、機材選びに困っているとは限らない。
商品数が増えてくれば、クロスセルの選択肢は自然に広がります。順序としては、まず縦方向で単価を上げる仕組みを作り、ラインナップの拡充に合わせて横方向を追加する。この流れが組み立てやすくなります。
上位商品がない場合は、既存商品を分割する
「アップセルをやりたいが、上位商品がない」
商品を1つしか持っていない段階では、必ず出てくる問題です。新しい商品を作るには時間がかかる。かといって、既存商品だけでは単価が上がりません。
ここで有効なのが、1つの商品を分割して構成し直す方法です。自社のデジタルコンテンツでも、この構成を採っています。もともと1つのコースとして作ったものを、一部だけ切り出してフロント商品として販売する。残りは「アップグレード」として、購入者にのみ提案します。
分割の切り口は、いくつかあります。
- 形式で切る — PDF教材をフロント、動画コンテンツをアップグレード
- 範囲で切る — 基礎編をフロント、応用編をアップグレード
- サポートで切る — 教材のみをフロント、サポート付きをアップグレード
- 素材で切る — 手順の解説をフロント、テンプレートや素材をアップグレード
新しい商品を作る必要はありません。すでにあるものを、どこで切るかを決めるだけです。
切ってはいけない場所がある
ただし、どこで切ってもいいわけではありません。フロント商品だけでは目的を達成できない状態にすると、返金や信頼の低下につながります。
判断の基準は、縦方向という考え方をそのまま使えます。
フロント商品を使い終えた人が、次にどこで詰まるか。
そこがアップグレードの位置です。
例えば、手順を解説した教材をフロントにしたとします。読んだ人は、自分でやってみようとする。そこで「時間がかかりすぎる」という壁にぶつかるなら、テンプレートがアップグレードになります。「やってみたが正しいか分からない」という壁なら、サポートがアップグレードです。
逆に言えば、フロント商品だけで一度は目的地に着ける状態にしておく必要があります。 着けないまま止まると、それは分割ではなく、単に不完全な商品を売っただけになります。
一歩進んだ人が次に直面する課題。そこに置くのが、縦方向の提案です。
提案する順序と組み合わせ
アップセルとクロスセルは、どちらか一方を選ぶものではありません。時間軸に沿って配置できます。
- 購入直後 → 縦方向の提案(アップセル)
- 断られた場合 → より手頃な選択肢を出す
- 時間が経ってから → 横方向の提案(クロスセル)
購入直後は、購買意欲が最も高い状態です。ここに置くべきは縦方向。同じ課題の延長線上にあるため、説明がほとんど要りません。「もっと確実にやりたいなら、これがあります」で通じます。
一方、横方向の提案には準備が必要です。顧客が別の課題を認識していなければ、提案そのものが唐突に見えます。商品を使い始めてから、その課題に直面するまでの時間を挟む。メールで数日後に提案する形が向いているのは、このためです。
すべてを同時に仕掛ける必要はありません。まず縦方向を1つ用意して、購入直後に提示する。ここから始めるのが最も手数が少なくなります。
断られた場合の選択肢
縦方向の提案が通らなかったとき、そこで終わりにする必要もありません。より手頃な選択肢を提示する方法があります。
例えば、サポート付きのアップグレードを断られたなら、テンプレートのみの提供を出す。金額が下がる分、判断のハードルも下がります。
ただし、これは縦方向の提案を用意した後の話です。最初から複数の分岐を設計しようとすると、商品を作る手が止まります。
WordPressで実装する場合
ここまでは商品設計の話です。実際にWordPress上で仕組みを組む場合、選択肢はサイトの構造によって変わります。
購入直後にその場で追加購入してもらう方式には、セールスファネル構築用のプラグインが必要になります。時間差でメール提案する場合は、メール配信プラグインとWooCommerceの連携で組めます。
どちらを選ぶべきかは、販売導線がLPを起点にしているかどうかで分かれます。具体的な実装方法とプラグインの選び方は、別記事で扱っています。
よくある質問
アップセルとクロスセル、どちらの方が効果が高いですか?
商品構成によって変わります。ただし商品数が少ない段階では、アップセルの方が設計しやすくなります。すでに購入した商品の延長線上にあるため、顧客の関心を確認する必要がありません。
アップセルは必ず高額商品でなければいけませんか?
購入後の提案であれば、元の商品より安い金額でも成立します。5万円の商品を買った人に2万円のアップグレードを提案すれば、注文の総額は7万円になります。単体の価格ではなく、注文全体の単価で考えてください。
1つの商品を分割すると、フロント商品の価値が下がりませんか?
フロント商品だけで一度は目的を達成できる状態にしてあれば、価値は下がりません。分割で問題が起きるのは、フロントだけでは使えない状態にした場合です。切る位置は、フロントを使い終えた人が次に詰まるところに置きます。
クロスセルはいつ提案すればいいですか?
顧客が別の課題に直面したタイミングです。購入直後は元の商品への関心が高い状態なので、横方向の提案は唐突に見えることがあります。商品を使い始めてから、メールなどで時間差をつけて提案する方法が向いています。
まとめ
アップセルは縦方向、クロスセルは横方向。この区別が、商品設計の起点になります。
- 商品が1つなら、まず縦方向を用意する
- 上位商品がなければ、既存商品を分割して作る
- 切る位置は、フロントを使い終えた人が次に詰まるところ
- 横方向は、商品数が増えてから追加する
どちらも既存顧客への提案なので、新規顧客を集めるより負担が軽くなります。すでに販売している商品があるなら、次の一手として組み立てやすい施策です。